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【レビュー】「中学受験 大逆転の志望校選び」で校風重視の学校選びを!

中学受験でもっとも大事なのは、もちろん志望校選び。ところがこの志望校選び、一筋縄ではいきません。

大学受験と異なり、小学生の子どもの学力は受験直前まで安定しないことも少なくありません。受験校が直前まで決まらないこともよくあります。

そこに加えて首都圏に存在する中高一貫校の数の多さも、志望校選びを難しくさせている一因です。

こうした状況下で、親としては唯一の客観的な指標である偏差値を大いに参考にして、志望校を選んでいくことになります。しかし、偏差値は志望校選びにとって絶対的に正しいものなのでしょうか?

今回はそんな悩み多き中高一貫校の志望校選びについて、参考となる本をご紹介します。

中学受験算数のカリスマ的指導者として人気の高い「きょうこ先生」でおなじみの安浪京子さんが、「校風」という指標を軸にした志望校選びを解説しています。

これから志望校を選ぶ方や、偏差値以外の学校選びのポイントに関心のある方は、ぜひとも本書の「校風マトリクス」を参考にしてみてください。

偏差値で中高一貫校を選ぶことの是非

いつの時代、どんな場所にも、偏差値を嫌う大人はいます。特に文化人と呼ばれる種類の人の中には、偏差値を親のかたきのように徹底的に攻撃する人もいます。

このような主張にも、もちろんひとつの真実が含まれています。人間には様々な才能があるにもかかわらず、テストの点数という画一的な指標のみで子どもを評価してよいものだろうか?これはとても難しい問題です。

ただ、いわゆる文化人の単純な「偏差値たたき」には注意が必要です。こうした人たちは中学受験の実態などはまったく理解せず、ただ単に「革新的で未来の教育を担っている自分」というブランドを磨き上げるためだけに、偏差値を攻撃しているケースが少なくありません。

そもそもこうした人たちというのは、たいていは高偏差値の学校を卒業しているものです。自分たちのキャリアを築く上で、少なからず偏差値や学歴といったものの恩恵を受けているはずの人たちが、今度は自分の社会的ステータスを上げるために偏差値を攻撃している。こんな皮肉な話はありません。

話がわき道にそれました。結局のところ、中学受験をするご両親とそのお子さんにとって、偏差値は志望校を決める上での重要な指標の一つであることは間違いありません。

一方で志望校選びという大事な問題に対して、偏差値だけしか参考となる物差しがないというのも不安ではあります。

このような問題に対して、「校風」という指標を大いに利用して志望校を決めましょうというのが、本書の主張です。

校風マトリックスとは?

地元の公立中学校と受験をして入学する中高一貫校では、大きく異なる点が2つあると本書では書かれています。

1つ目は、中高一貫校には男子校、女子校などがあるという点。

そして2つ目は、中高一貫校には学校の文化、いわゆる「校風」が存在するという点です。

公立の学校では先生は公務員ですから数年ごとに異動が発生するのに対して、私立の学校では先生が長期間にわたって指導することが珍しくありません。また私立校ではいわゆるミッション系と呼ばれる、キリスト教などの宗教組織が運営している場合もあります。このような理由により、私立ではその学校独自の文化が育ちやすい傾向にあります。

このことを志望校選びに利用するにあたり、本書では校風マトリクスと呼ばれる手法で学校を分類分けしています。

校風マトリクスでは、2つの評価軸によって校風を分類しています。

1つめは、自主性を重んじているのか、あるいは管理型の教育をしているのかという点。

2つめは、革新・体験を重視して様々な体験の機会をあたえているか、それとも従来の知識型教育を重視しているかという点。

これらの軸を踏まえて、各学校の校風が男子校・女子校ごとにまとめられています。この校風マトリクスは大変な力作だと思いますので、興味のある方は是非とも本書を手にとってみることをおすすめします。

悩んだら、まずは自由な校風か管理型の校風で考える

校風マトリクスでもっとも注目すべきは、校風が自由型なのか管理型なのかといった観点です。表でいうと、横軸の部分ですね。

自由な校風とは文字通り、校則などはあまりなく、生徒の自主性を尊重する学校です。これは学習でも同じことがいえますので、勉強は自己責任で自分のペースでやってください、と突き放すようなところもあります。

一方で管理型の校風の場合、学校での生活や勉強などの面倒をしっかりとみますというメッセージを強く出しています。特に勉強に関しては、毎朝の小テストであったり、受験対策のための授業をしっかりとおこないます。

どちらもそれぞれ良いところがありますが、肝心なのは子どもが馴染める環境はどちらなのか、という点です。

私などは典型的な自由型の人間のため、やることはすべて自分で決めたいと考えています。勉強も指示してやらされるよりは、自分のペースで計画を考えるのが好きでした。そんな私の通っていた中高一貫校は、まさに自由な校風と呼べるような環境でしたので、とても過ごしやすかったです。

お子さんによっては、こうした環境だと何をしていいのか分からずに戸惑うこともあるかもしれません。特に自主的に勉強をするようなタイプでない場合は、管理型の学校で勉強をしたほうが成績も伸びやすいでしょう。

繰り返しになりますが、どちらの校風が良いかは子どもの性質によって判断しましょう。無理やり勉強させたいと思って管理型の学校にいれたとしても、子どもの性格が自由型の場合、かえって逆効果になってしまいます。

中学受験で大逆転は起こるのか?

ところで本書のタイトルには「大逆転」とあります。果たして、志望校選びに大逆転はあるのでしょうか?

学校ごとに文化や校風があるのと同様に、入試問題にもその学校特有のクセや特徴があります。もしもこの特徴にうまくはまれば、偏差値が届かなくても上位校を狙える可能性はある、というのがその意図するところでしょう。

ただ実際には、いわゆる難関校を目指すためには基本的な学力が絶対的に必要です。その意味においては、偏差値はもっとも信頼できる指標です。

むしろ気をつけなくてはいけないのは、学力も高く偏差値的にも問題のないお子さんが、志望校の問題との相性が悪いために不合格となってしまうというケースです。こちらは同じ大逆転でも、逆転負けの方ですね。

こうした事態を避けるために、志望校の問題を吟味し、過去問を徹底的に攻略する方法が本書の後半では述べられています。

そういう意味では、逆転勝利を狙って本書を手にとった人にはもの足りない内容かもしれません。本というのは売れなくてはいけませんから、出版社側が売れ筋のタイトルを押し込んだ、というのが真相でしょう。

筆者の「大逆転」という思いは、むしろあとがきの部分で率直に語られています。

中学受験の結果に対する意味付けは、振り返る時点で全く異なります。思う学校に進学できなかったご家庭にとっては、今は苦々しい現実でしかないかもしれません。しかし、子供の人生は続き、これでおしまいになるわけではありません。(中略)「大逆転」がいつやってくるのかは、誰にもわからないのです。

本書 「おわりに」より

第一志望の学校に入れなかったとしても、あとから振り返ってみれば子どもにぴったりの学校だったと思えるような日が来る。そうなれば、そのときが「大逆転」の瞬間です。そのためにも、偏差値だけに頼らない志望校選びが重要なのですね。

まとめ

教育にとって一番大事なことは、子どもの能力を矯正するのではなく、もって生まれたものを伸ばしてやることだと私は考えています。

中高一貫校というのは、その学校の数だけ個性があります。それは、多種多様な特徴をもった子どもにぴったりの学校を選び出すチャンスが広がる、という意味でもあります。偏差値を超えた真の意味での志望校選びを、ぜひとも考えてみてください。